財形住宅貯蓄とは、マイホームの購入やメンテナンス、リフォームなどに活用する資金づくりを会社の協力を得て行う貯蓄のことです。
制度を導入している企業の従業員であれば、基本的にどんな方でも利用が可能です。
利用方法は簡単で、毎月の給与やボーナスから天引きされた金額が財形貯蓄として金融機関に送金されます。
積立金額をリフォームの資金として引き出すためには基本的に5年間以上の積立期間が必要で、そのほか制度を利用するメリットとデメリットを把握することが重要です。
本記事では、住宅財形貯蓄制度のメリット・デメリットから、非課税で資金を引き出すための条件、注意点について、住宅財形貯蓄制度を利用したリフォームを検討している方へわかりやすく解説をします。
ぜひ最後までご覧ください。
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監修者:外装劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
▼略歴・プロフィール |
財形住宅貯蓄のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
積み立て額が増えるほど税金が有利になる | 自由に引き下ろしできない |
奨励金がつく制度もある | 元本割れのリスクがある |
財形住宅融資制度が受けられる | そもそもの利子が低い |
目的に合わせた資産形成ができる | 所得控除制度がない |
財形住宅のメリットとデメリットを上記の表にまとめました。
それぞれのメリットとデメリットについてここから詳しく解説をします。
財形住宅貯蓄のメリット
積み立て額が増えるほど税金が有利になる
財形住宅貯蓄は、元利合計550万円までなら利子が非課税になります。
積み立て額の利息は通常課税対象となり、利息のうち20%は引かれてしまいます。
しかし、財形住宅貯蓄の場合は550万円までなら非課税です。
あえて財形住宅貯蓄をしなくても普通預金で貯めれば良いと考える人も多いでしょう。
しかしその用途が住まいの購入やリフォームに限定される場合、財形住宅貯蓄の方が税金が有利になります。
奨励金がつく制度もある
財形貯蓄には積み立てに対して、1~5%の奨励金がつく制度もあります。
100万円積み立て・3%の奨励金がつく場合に得られる金額は30,000円です。
この奨励金は、そもそもの有無・奨励金条件が会社によってまちまちです。
まずはお勤め先に奨励金があるかどうかを確認しましょう。
参考までに、奨励金条件の例を下記に記載します。
奨励金条件の例
- 積み立て額の3%に対して奨励金を支給する
- 奨励金は年間最大50万円の積み立て額に対して支給する
- 奨励金は積み立てと同時に支給する
財形住宅融資制度が受けられる
財形貯蓄に加入すると、財形住宅融資制度を利用することができます。
この制度は「財形持家転貸融資」と呼ばれ、住宅購入やリフォームにかかる費用の融資を受けることが可能となります。
具体的受け取れる融資は、財形貯蓄残高の10倍以内、最大4000万円です。
手持ちの資金に加えて、融資を利用してリフォームをされたい方にはぴったりな制度でしょう。
▼「財形住宅融資制度」について詳しく知りたい方は、勤労者退職金共済機構勤労者財産形成事業本部のページを参考にしてください。
>>財形持家転貸融資
目的に合わせた資産形成ができる
住宅財形貯蓄最後のメリットは、目的に合わせた資産形成ができるです。
これは、貯蓄方法のコツに関するメリットです。
住宅の修繕費、老後資金は貯めておかなければならないお金です。
財形貯蓄を利用することによって、はっきりとした利用目的に応じた資産形成が可能となります。
本当は住宅の維持費のために貯めていたお金を、教育費や車の購入に充ててしまった…というような事態は、財形貯蓄を利用することで回避をすることができるのです。
財形住宅貯蓄のデメリット
自由に引き下ろしできない
住宅財形は、自由に引き下ろすことができません。
引き出す際は、支出目的が住宅購入やリフォーム費用など住宅財形が定めた条件を満たさなければなりません。
不足の事態に備えた貯蓄が住宅財形のほかにない方、機会損失を防ぐために、手元資金をいつでも自由に運用したい方は、特におすすめできません。
元本割れのリスクがある
元本割れのリスクがあり、当初の貯蓄費用が得られる利益を下回ることがあります。
財形貯蓄「財形保険」や「投資信託」といった元本割れリスクのある金融商品として運用をします。
したがって、市況が悪化した場合は、元本割れをするリスクがあるのです。
「貯蓄」と名前がある通り、安心してお金を貯められる制度という印象を持ってしまいがちですが、利用する金融商品次第では、元本割れするリスクがあることを抑えておきましょう。
そもそもの利子が低い
住宅財形によって得られる利益は非常にわずかな金額です。
なぜなら、近年は金融機関が低金利政策を維持し続けているからです。
下記に1年間の利息収入見込みをシミュレーションしました。
110円×20.315%=22円
※解説
550万円:住宅財形の最大元金
0.002%:2022年現在のメガバンクの金利
20.315%:利子にかかる税率
このように、1年あたり約22円しか非課税になる金額がないため、住宅財形リフォームによって得られる利益はごくわずかな金額です。
所得控除制度がない
最後のデメリットは、財形住宅貯蓄は所得控除制度がない点です。
例えば、iDeCoは月々の掛け金が全額所得控除の対象となり所得税や住民減を節税することが可能です。
そのため、現役時代の節税を通じてリフォーム資金を貯蓄したい方にとっては不向きな制度となります。
非課税で財形住宅貯蓄を引き出すリフォーム条件
非課税で財形住宅貯蓄を引き出すためには、住宅要件と工事内容の二点を満たす必要があります。
上記の基本的な条件に加えて、「適格払い出し」についても理解を深めましょう。
適格払い出しとは、主に、住宅財形貯蓄で貯めた資金を非課税で引き出すための条件のことを指します。
適格払い出しは、住宅財形貯蓄を活用したリフォームにおいて必須の知識です。
なぜなら、リフォームをする条件・内容によっては、適格払い出しに合致をせず、資金の引き出しに税金がかかってしまうことがあるからです。
ここからは、住宅財形貯蓄を非課税で引き出してリフォームする方法について、解説をします。
非課税となるリフォーム
非課税でリフォームをするためには、住宅条要件と工事内容二つの条件を満たす必要があります。
非課税でリフォームをするための住宅条件は下記の通りです。
住宅要件
- リフォーム費用が75万円を超える
- リフォーム後の住宅の床面積が50㎡以上
- リフォーム後の住宅に本人が居住する
- 居住用以外の部分もリフォームする場合は、居住用部分の工事費用が全費用の1/2以上となる。
非課税でリフォームをするための工事内容は下記の通りです。
工事内容
- 増築・改築、大規模修繕・大規模模様替え
- 床・階段・間仕切壁・内壁の1/2以上の修繕
- 居室・浴室など室内のいずれか一室の壁・床全部の修繕
- 構造強化・耐震強化工事
- バリアフリー工事
- 省エネ工事
また、適格払い出しの対象となるかの最終的は判断は、金融機関や税務機関の見解によって異なる場合がありますので、注意をしましょう。
課税対象となるリフォーム事例
一方で、課税対象となるリフォーム工事内容の代表事例は、下記の通りです。
課税対象の工事事例
- オール電化や太陽熱システム等の設置のみの工事
- ベランダ、駐車場など非居住部分の修繕
- 親名義の実家のリフォーム
外壁塗装や増改築などリフォームの一部に関しても、財形住宅貯蓄からの払い出し要件にマッチする可能性があります。
もしこれらのリフォームで財形住宅貯蓄を活用して行いたい場合は、まず対象の工事となるかどうかの確認が必要です。
対象工事となるかどうかを確実に確かめたい方は、建築士やヌリカエの無料相談窓口までご相談をください。
財形住宅貯蓄でリフォームする時に必要な書類・手続き方法
住宅財形貯蓄は、払い出しをするタイミングによって、2通りの手続き方法があります。
- リフォーム前後、二回に分けた払い出し(1回払い)
- リフォーム後、一回の払い出し(2回払い)
手続き方法は、払い戻しをするタイミングによって異なります。
ここからは、リフォーム前後の二回に分けた払い出しと、リフォーム後、一回の払い出しを行う際の手続き方法について解説をします。
リフォーム前後、二回に分けた払い出しで必要な書類と手続き方法
リフォーム前後、二回に分けて払い出しする場合は、下記の通り手続きを行ってください。
リフォーム前の手続き
- 業者と契約を結ぶ
- 金融機関に住宅の工事請負契約書を提出する
リフォーム後の手続き
- 一回目の払い出しから二年以内か、リフォームをした日から一年以内のどちらか早いタイミングで、下記の必要書類を提出する。
- 住宅の登記事項証明書
- 住民票の写し、住民票記載事項証明書、外国人登録原票の記載事項証明書、外国人登録原票の写し、のいずれか1点
- 確認済証、検査済証、増改築等工事証明書、のうちいずれか1点
リフォーム後、一回の払い出しで必要な書類と手続き方法
リフォームをした日から一年以内に、下記の書類を提出しましょう。
必要書類
- 住宅の工事請負契約書
- 住宅の登記事項証明書
- 住民票の写し、住民票記載事項証明書、外国人登録原票の記載事項証明書、外国人登録原票の写し、のいずれか1点
- 確認済証、検査済証、増改築等工事証明書、のうちいずれか1点
細かな手続きの流れは加入している金融機関によって異なりますが、勤務先を経由して手続きをすることが一般的です。
下記のような流れで手続きを行います。
- 勤務先担当部署に必要書類を提出
- 勤務先が金融機関へ書類を郵送する
- 郵送後、指定口座へ払い出し金額が振込される
なお、信託銀行・証券会社・損害保険会社に加入している場合は、勤務先経由での手続きに加えて、契約者本人が直接銀行窓口で手続きすることも可能です。
住宅財形貯蓄を引き出す際の注意点
住宅財形貯蓄の払い出し方法には、「一部払い出し」「全額払い出し」「口座解約」の3つの方法があります。
引き出し方法について、2点注意をしてください。
まず一つめの注意点は一部払い出しで引き出せる金額です。
一部払い出しできる金額には条件が定められています。
- 残高の9割まで
- 必要な金額が残高の9割未満の場合は必要な額だけ引き出し可能。
また、二つめの注意点は、払い出し方法は払い出すタイミングによって制約が設けられている点です。
下記に、払い出すタイミングと、払い出し方法の可否をまとめました。
払い出し方法 | 一部払い出し | 全額払い出し | 口座解約 |
---|---|---|---|
リフォーム前 | 〇 | × | × |
リフォーム後 | 〇 | 〇 | 〇 |
口座解約 | × | × | 〇 |
基本的に、リフォーム後であれば、一部払い出し、全額払い出し、口座解約の全ての方法で引き出しが可能です。
一方で、リフォーム前は、一部払い出しのみが引き出し可能となります。
記事のおさらい
財形住宅貯蓄のメリットは?
財形住宅貯蓄のメリットは、「積み立て額が増えるほど税金が有利になる」「奨励金がつく制度もある」「財形住宅融資制度が受けられる」「目的に合わせた資産形成ができる」の4つです。詳しく知りたい方は財形住宅貯蓄のメリットをご覧ください。
財形住宅貯蓄のデメリットは?
財形住宅貯蓄のデメリットは、「自由に引き下ろしできない」「元本割れのリスクがある」「そもそもの利子が低い」「所得控除制度がない」の4つです。詳しくは財形住宅貯蓄のデメリットをご覧ください。
非課税で財形住宅貯蓄を引き出すリフォーム条件は?
非課税で財形住宅貯蓄を引き出すためには、住宅要件と工事内容の二点を満たす必要があります。詳しくは非課税で財形住宅貯蓄を引き出すリフォーム条件をご覧下さい。
財形住宅貯蓄を引き出す際の注意点は?
財形住宅貯蓄を引き出す際の注意点は、「一部払い出しで引き出せる金額には条件が定められていること」「払い出し方法は払い出すタイミングによって制約が設けられていること」の2つです。詳しくは財形住宅貯蓄を引き出す際の注意点をご覧下さい。
財形住宅貯蓄を使ったリフォームって複雑…手続きできるか心配な時はどうすれば良い?
住宅財形リフォームを行うには、様々な書類の準備や要件などルールが多いことがわかりました。もちろん自分で今回ご紹介した内容に沿って払い出しの手続きを行うことも可能ですが、心配な人も多いでしょう。
最近ではリフォームを行う前に、財形住宅貯蓄を使うことができるのか、その手続きにかかる費用はどのくらいなのかなど、無料で丁寧に教えてくれる業者も増えました。あらかじめリフォームを行う前に財形住宅貯蓄を活用したい旨を伝えるかどうかで、工面しなければならない工事費用が大きく変わってくる可能性もあります。
もし住宅財形リフォームを行うのであれば、早いうちからプロに相談するのが一番です。自分一人で判断せずに、確実に財形住宅貯蓄を活用できるようにアドバイスをもらいながら進めていくことをオススメします。


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