軒天塗装とは、屋根の裏側(天井)である軒天に塗料を塗る作業のことです。
軒天は常に雨風にさらされるため、劣化防止のためにも定期的なメンテナンスが欠かせません
また、天井裏の換気をしたり、火災時の延焼を防いだりと、軒天は重要な役割を担う箇所です。
本記事では軒天塗装の画用からメリット、手順までを解説していきます。ぜひ、参考にしてみてください。
軒天塗装とは
軒天とは住居の屋根の裏側のうち、建物からはみ出している部分を指します。軒天塗装はこの軒天に塗料を塗る作業です。
軒天塗装を行うことで屋根から雨水が壁面に直接あたるのを防いだり、建物の劣化を防ぐなどの効果を発揮します。
常に雨風にさらされる軒天をメンテナンスする役割が軒天塗装になります。
軒天によく使われる材質
軒天によく使われる材質は、ベニヤ板などの木材系・ケイカル版などの不燃系・ガルバリウム鋼板を加工した金属系の3種類です。
木材系(ベニヤ板・化粧合板)

以前はベニヤ板や化粧合板が木造住宅の軒天に使用されていました。
美しいデザインの木目と低価格が魅力ですが、経年劣化が早く、防火性や耐水性に欠けるのがデメリットです。経年劣化が進むと表面の塗膜が剥がれやすくなるため、定期的に塗装での保護が必要になります。また、10年以上経過した木材系の軒天の場合、張替え工事も必要になります。
木材系のメンテナンス
- 経年劣化で表層が剥がれやすい
- 10年以上経過している場合は張り替えが必要なケースが多い
不燃系(ケイカル板・フレキシブルボード)

近年、新築やリフォームにおいてよく使用される材質が不燃系の軒天材です。
ケイカル板はケイ酸と酸化カルシウム(生石灰)から製造され、耐火性と防湿性に優れていますが、吸水性が高く塗装による保護が必要です。
一方、フレキシブルボードはセメントと補強繊維で作られており、強度が高く不燃性に優れています。一方で重量がケイカル板の約2倍になるため、設置前に下地の強度確認が必要です。
不燃系のメンテナンス
- ケイカル板:吸水性が高いため、塗装による塗膜保護が必要な場合が多い
- フレキシブルボード:重量があるため、下地の状態や強度に問題がないかの確認が必要
金属系(ガルバリウム鋼板・アルミスパンドレル)

ガルバリウム鋼板やアルミスパンドレルなど、加工した金属板の軒天もあります。
金属板の軒天は屋根や外壁材としても普及しており、軽量で耐火性・耐水性・耐久性に優れているのが特徴です。
ガルバリウム鋼板とアルミは錆びにくい素材ですが、時間が経過すると錆が発生し、耐久性や美観が低下する可能性があります。そのため、15〜20年ごとに錆止め塗装と仕上げ塗装が必要です。
金属系のメンテナンス
- 15~20年程度の頻度で錆(さび)止めを行う必要がある
- 錆(さび)を放置すると腐食が進行し、最悪の場合穴が空いてしまう場合がある
軒天塗装のメリット
軒天塗装のメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
軒天塗装のメリット
- 屋根からの雨水が壁面に直接当たるのを防ぐ
- 建物内部への雨水の侵入を防ぐ
- 建物の劣化を未然に防ぎ、寿命を延ばす
屋根からの雨水が壁面に直接当たるのを防ぐ
外壁からはみ出している軒天は、外壁への雨水の吹き込みや太陽光を遮る役割を担っています。言い換えれば、外壁にあたる雨水などをすべて受け止めていることになります。
そのため軒天は劣化の進行が進みやすく、定期的なメンテナンスが必要です。
軒天塗装を行うことで、屋根からの雨水が壁面に直接あたるのを防ぎ、耐久性を向上させることにつながります。
建物内部への雨水の侵入を防ぐ
軒天があることで建物内部への雨水の侵入を防ぐことが可能です。しかし、軒天が劣化してしまうと雨水の侵入を防げず、内部への侵入が進むことになります。
雨水が侵入してしまうと、建物内部の腐食が進んでしまうなど住居にとって致命的なトラブルになりかねません。
こうしたトラブルを未然に防ぎ、軒天の大切な役割を守ることが軒天塗装によって可能になります。
建物の劣化を未然に防ぎ、寿命を延ばす
建物の劣化を防ぐ役割をもつ軒天を塗装することは、建物そのもの劣化を未然に防ぎ、寿命を延ばすことにもつながります。
反対にメンテナンスを怠ってしまうと、塗装のはがれや色あせ、汚れ、雨漏れなどのトラブルが発生する原因になってしまいます。
こうした症状が出ている場合は、軒天塗装を行うタイミングです。ぜひ定期的な確認とメンテナンスをお願いします。
軒天塗装の費用相場
軒天塗装の費用相場は、1平方メートルあたり800~1,500円程度を見込んでおくとよいでしょう。
なお、軒天塗装を業者に依頼する場合は塗装範囲や使用する塗料、どの施工業者に依頼するかで金額が変わってきます。
相場としては下記の値段が一般的ですが、あくまで参考程度に押さえておいてください。
- 塗装:1,000円~1,500円/㎡
- 足場設置代金:100,000円~200,000円
塗装範囲にもよりますが、おおむね20万円から30万円程度はかかるとみてくとよいでしょう。
軒天塗装の手順
軒天塗装は以下の手順で進めていきます。
軒天塗装の手順
- 足場を設置する
- マスキング・養生をする
- 洗浄、下地処理をする
- 下塗りをする
- 中塗りをする
- 上塗りをする
軒天塗装の手順は、外壁塗装と基本的には変わりません。
足場を設置し、周辺に塗料が付かないようにマスキングや養生をおこない、下地処理を行う流れです。なお、軒天塗装では高圧洗浄を行わないことに注意が必要です。
軒天に高圧洗浄をしてしまうと、軒天に空いている温度調整用の穴から水が侵入してしまい、トラブルにつながる可能性があります。
軒天の塗装に必要な道具
軒天の塗装に必要な道具は以下の通りです。
軒天塗装では上記のものが最低限必要です。
なお、軒天塗装は高所作業になるため非常に危険な作業となります。そのため地面にはしごを立てて軒天塗装を行うのは絶対に避けてください。
ベランダから塗装できる範囲であれば、それほどの危険はありませんが、ベランダに脚立を立てるなどはバランスを崩してしまう可能性がるため、業者の活用を検討しましょう。
軒天塗装の注意点
軒天塗装を行う際は、以下の4点に注意して作業を進めることが大切です。
軒天塗装の注意点
- 透水性がある艶消塗料を使用する
- 軒天材を釘や金具で固定している場合は錆止めを施す
- 軒天の色選びは建物との相性を確かめる
- 配色では統一感を重視する
透水性がある艶消塗料を使用する
軒天からの雨水の侵入を防止するためには、透水性がある艶消塗料の利用が最適です。
透水性がある艶消塗料には、塗膜が浮き上がる「フクレ」を防ぐ役割をもち、耐久性の向上につながります。
具体的には水性ケンエースがおすすめです。
軒天材を釘や金具で固定している場合は錆止めを施す
軒天材を釘や金具で固定している場合は錆止めを施すことを忘れないようにしましょう。錆止めを施さずに進めてしまうと、塗装後の錆が発生し、錆びた汚れが軒天に付着してしまう恐れがあります。
軒天の色選びは建物との相性を確かめる
軒天の色は建物との相性によって見栄えが変わってきます。
軒天を外壁や屋根の色と変えたいと考えている場合は、それぞれの色と相性のよい色にしないと、家全体のバランスが崩れてしまいます。
どんな色にした以下は、カラーバリエーションを検討するなど慎重に進めましょう。
配色は統一感を重視する
配色に悩む場合は、統一感を重視することが大切です。とくに外壁と軒天の表面が同じ素材の場合は、同系統の色に揃えると違和感のない配色になります。
外壁に加え屋根の色を確認して、まとまりのある色合いになっているかを事前に確認しておきましょう。
軒天の塗装・修理は業者に依頼しよう
軒天塗装を検討する際は、業者への依頼を第一に考えるのがおすすめです。
軒天を美しく仕上げることはもちろんのこと、質の高い塗装が実現できます。
軒天の修理を業者に依頼する際のポイント
塗装業者の中には悪徳業者と評価して差し支えないような詐欺まがいの行為を働くところがあります。
悪徳業者につかまると、過度な請求を受けるのみならず、そもそもの修理までずさんなものとなる恐れがあります。
以下に記載している優良業者の特徴を確認し、問題のない業者かを判断しましょう
軒天修理の優良業者の特徴
軒天修理の優良業者は以下のような特徴を備えています。
・見積もり前に軒天を直接見て調査を行う
・軒天の現状と修理方法を丁寧に説明する
・見積もりの内訳が詳細である
・その場での契約を迫ってこない
また、見積もりに個別的な項目として「人件費」「材料原価」「交通費」「足場設置費用」が記載されていると、どこにいくらかかっているのかが明瞭になります。
こうした見積もりが詳細な点も見分けるポイントになるため、必ず相見積もりを取るなど、見積もりの比較を行ってください。
まとめ
軒天は雨風に常にさらされるため、定期的なメンテナンスが必須です。メンテナンスは軒天塗装を行うことで、カバーができます。建物の劣化を未然に防ぎ、寿命を延ばすメリットもあるなど、長く家に住み続けるためには軒天塗装は欠かせません。
ぜひ、家の軒天に目を向けて軒天塗装が必要かどうかを考えてみてください。