タイル材の外壁は、他の素材では出せない高級感と、長い耐用年数、メンテナンス頻度の低さが強み。
それに加えて外壁タイルは商品の種類がとにかく豊富で、色やデザインにこだわれるのも大きな魅力です。
本記事は、外壁材にタイルの使用を検討中の方に向けて、
- 外壁タイル材の種類と選び方
- 外壁タイルのデザイン系統別のおすすめ製品
をメインに解説しています。
自分の希望に合う外壁タイルを見つけるために知っておきたい話を、経験豊富な編集部員がお教えします!
外壁タイルのメーカーとおすすめ製品
本章では、外壁タイルを選ぶなら知っておきたいメーカーと、注目の製品をピックアップしてご紹介します。
LIXIL(リクシル)
リクシルは、国内最大手の建材・住宅設備グループ企業です。
外壁タイルだけでも70種類以上の製品があり、モダン、和風、洋風など使いやすいデザインが豊富に揃っており、価格も手頃なものが多いのが特徴です。
おすすめの外壁タイル①「火色音」(ひいろね)
画像出典:外装壁タイル[はるかべ工法・モルタル張り共用](LIXIL)
リクシルの製品のなかでも、特にリーズナブルな外壁タイルです。
接着剤工法のほか、モルタル外壁に張ることもできるため、他種のタイルよりも施工可能な外壁が多いのも特徴となっています。
「火色音」は、釉薬の使用量の差を含め、カラーバリエーションは11色です。
デザインもオーソドックスで、焼き物の彩りと表情をじゅうぶんに味わうことができます。
価格・使いやすさが両立した、幅広い方におすすめしやすいタイル製品です。
石柄 | 全1種類 |
---|---|
色数 | 全14色 |
製品価格 | 7,500円/㎡~ |
張付け方法 | 専用接着剤張り「はるかべ工法」、モルタル施工 |
標準目地幅 | タテ8mm、ヨコ10mm |
おすすめの外壁タイル②「ストーンタイプコレクション」
画像出典:戸建て向けエクステリアタイルカタログ(LIXIL)
リクシル独自の「はるかべ工法」で施工するタイル製品です。
はるかべ工法とは、セメントではなく専用接着剤でタイルを張る工法で、従来よりも施工期間が短く、費用も安くなるメリットがあります。
「ストーンタイプコレクション」には、伝統的に使用されてきたタイルの石種をもとにした、11パターンのデザインがあります。
現在主流となっているタイルには細身のデザインが多いですが、ストーンタイプコレクションは大判タイプとなっており、色の柄がしっかり分かります。
かわりに、リクシルの製品としても、外壁タイル全体としても高級品となります。
石柄 | 全7種類 |
---|---|
色数 | 全13色 |
製品価格 | 11,600円/㎡~ |
張付け方法 | 専用接着剤張り「はるかべ工法」 |
標準目地幅 | タテ3mm、ヨコ3mm |
セキスイハイム
大手ハウスメーカーのセキスイハイムは、自社の新築やリフォーム用に外装材も取り揃えています。
外壁タイルのラインナップは5種類あります。
タイルの製品名 | 特徴 |
---|---|
![]() レジデンスタイルN |
1枚が非常に厚い。重厚感ならナンバーワン |
![]() レジデンスタイルG |
組違いの織り目柄。個性的ながらも上品なイメージ |
![]() ラスティックタイル |
ベーシックなデザイン。1枚ずつ色味が違う |
![]() Sラティスタイル |
陰影のある方眼デザイン。色によってイメージが変わる |
![]() スクラッチタイル |
縦方向に引っかき溝の入ったデザイン。色は白のみ |
名古屋モザイク工業
名古屋モザイク工業は、タイルを主力にした大手メーカーです。タイル関連商品の数は、1万点以上にも及びます。
輸入タイルの販売と国産タイルの企画開発の両方を得意としており、全国10箇所(東京、大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台、横浜、静岡、広島、沖縄)にショールームももっています。
リクシルが住宅全般を手広く扱っているメーカーなのに対し、名古屋モザイク工業はタイルをもっとも得意とする点が心強いメーカーです。
おすすめの外壁タイル①「SALA」(サラ)
名古屋モザイク工業の製品のなかでも、非常にリーズナブルな国産タイルです。
大きさと色の異なる2種類のタイルをつかい、デザインにも工夫が見られます。
「サラ」のカラーバリエーションは、アースカラーを基調とした全10色です。
石柄 | 全1種類 |
---|---|
色数 | 全10色 |
製品価格 | 3,700円/㎡~ |
張付け方法 | 接着剤張り |
標準目地幅 | タテ5mm、ヨコ5mm |
おすすめの外壁タイル②「CRUGLAZE」(クルグレイズ)
磁器質で光沢のある、アーティスティックな外壁タイル材です。
また、アートタイルとしては手が届きやすい価格のも魅力です。
「クルグレイズ」のカラーバリエーションは5種類あり、いずれも輝きが映えるアースカラーが基調となっています。
石柄 | 全1種類 |
---|---|
色数 | 全5色 |
製品価格 | 11,000円/㎡~ |
張付け方法 | 接着剤張工法 |
標準目地幅 | タテ3mm、ヨコ3mm |
DANTO(ダントー)
ダントーは、タイルを主力にした創業135年の国内タイルメーカーです。
創業から一貫して自社工場でのタイル製造を続けており、品質に定評があり、デザインにもオリジナリティがあります。価格も比較的手頃です。
おすすめの外壁タイル「ニールボーダー」
ダントーの外壁タイルのなかでも、価格が非常に手頃でデザインも使う家を選ばない、親しみやすいタイルです。
なるべく安価に外壁タイルを使用したい場合に特ににおすすめです。
「ニールボーダー」のデザインは細身のボーダー型で、白・黒と茶系3種類の全5色から選べます。
色数 | 全5色 |
---|---|
製品価格 | 6,100円/㎡~ |
張付け方法 | 接着剤張り付け |
標準目地幅 | タテ3mm、ヨコ5mm |
日東製陶所
日東製陶所は、国内のシェア率30%を誇る国産タイルメーカーです。
また、内装用よりも外装用を主力としているのも特徴で、色や表面の質感など多くのバリエーションがあります。
おすすめの外壁タイル「エポカX」
タイル表面が平らではなく凹凸があり、切り出した岩を割ったまま使ったような高級感があります。
「エポカX」のカラーバリエーションは、モノトーンと茶色系で全6色です。
色数 | 全6色 |
---|---|
製品価格 | 3,900円/㎡~ |
張付け方法 | 接着剤張り |
標準目地幅 | タテ5mm、ヨコ5mm |
ADVAN(アドヴァン)
アドヴァンは、タイル施工会社を前身にした、輸入タイルの販売会社です。
自社工場は持たないメーカーですが、東京・大阪・名古屋・福岡・沖縄の5か所にショールームをもち、製品を見に行ける機会も多いメーカーです。
おすすめの外壁タイル「スプリットフェイス スリムⅡ」
天然石を細いボーダーに加工した、外壁用のタイルです。
微妙な色の濃淡がよく分かる仕上がりで、価格こそ標準的ですが見た目に高級感があり、おすすめです。
「スプリットフェイス スリムⅡ」のバリエーションは全4色です。
色数 | 全4色 |
---|---|
製品価格 | 11,500円/㎡~ |
張付け方法 | 全面改良圧着 |
標準目地幅 | ― |
▼住宅の主な外壁材の種類や特徴については、以下の記事で詳しく解説しています。
>> 代表的な外壁材の種類と特徴
外壁タイルの種類と選び方
そもそもタイルとは、粘土や石などを粉砕し成形して焼き上げたものです。
外壁タイルの種類は豊富で選ぶのに困ってしまいますが、「形状・釉薬・素地」の分類を知っておくと自分に合うものが見つけやすくなります。
外壁タイルの「サイズ」の種類
外壁の平らな面に張るタイルを「平物」といい、通常は平物タイルを見て製品を選びます。
代表的な平物タイルはさらに4つに種類が分かれ、それぞれ見た目の高級感や施工費用も変わります。
サイズの種類 | 1枚の大きさ | 特徴 |
---|---|---|
![]() 45二丁 |
95mm×45mm | 安価。約30cm四方のシートでまとめ張りする |
![]() 小口平 |
108mm×60mm | 7,000円/㎡~。かつての主流タイル。最近は種類が少ない |
![]() 二丁掛け |
227mm×60mm | 7,000円/㎡~。重厚感がでる。種類も豊富 |
![]() ブリック |
多様 | 9,000円/㎡~。レンガ調や石調など本格的な質感 |
サイズは、重厚感・高級感を重視するなら「二丁掛け」か「ブリック」、コストの安さを重視するなら「45二丁」の製品を選ぶと良いでしょう。
外壁タイルの「釉薬」からくる種類
釉薬(うわぐすり・ゆうやく)とは、タイルの焼成前にかけられる薬品です。
種類により表面の色・光沢・強度・汚れにくさが変わります。釉薬をかけずに焼かれたタイルもあります。
製品選びの際は、以下の4種類をおさえておけばよいでしょう。
釉薬の種類 | 特徴 |
---|---|
![]() ラスター釉 |
もっとも光沢がある。傷がつきやすい |
![]() マット釉 |
光沢のないつや消しの仕上がり |
![]() うす釉 |
少量の透明釉薬をかけたもの |
![]() 無釉 |
釉薬をかけずに焼いたもの。素朴な風合い。表面が汚れやすい |
釉薬の種類は、「汚れやすくてもよいか」「どのくらいタイルの存在感を出したいか」で選ぶとよいでしょう。
- 「ラスター釉」はもっとも主張が強く個性的。少し傷に弱い
- 「マット釉」はバランス型。他の部位の素材や景観と無難に合わせやすい
- 「うす釉」の質感は無釉と同様。最低限の汚れにくさが加わっている
- 「無釉」は土自体のナチュラルな風合いがある。表面にホコリがたりやすい
外壁タイルの「素地」の種類
タイルの素地(そじ)とは、釉薬がかかっていない基礎の材質のことです。
素地は土を焼成した温度によって3種類あり、タイルの硬さや吸水性が変わります。
タイルの種類 | 吸水率 | 特徴 |
---|---|---|
磁器質 | 1%以下 | 1250℃以上で焼成。固くて耐水性が高いためもっとも外壁に向くのタイル |
せっ器質 | 5%以下 | 1200℃前後で焼成。磁器質と陶器質の中間。磁器質より加工しやすい。外壁にもよく使われる |
陶器質 | 22%以下 | 1000℃以上で焼成。吸水性が高い。外壁よりも内装に向く |
外壁タイルには「磁器質」か「せっ器質」のものを選びましょう。
陶器質のものは、吸水性が高く凍害を起こしやすいので外壁に使うと早々に劣化してしまいます。
外壁をタイル張りにする前に知っておきたいこと
ここからは外壁タイルを決める前に知っておきたい知識についてまとめました。
タイルのメリットとデメリット
外壁材にタイルを使用する主なメリットは以下の4つです。
- 傷に強く、汚れが落ちやすい
- 紫外線に強く、ほぼ色褪せを起こさない
- 塗装メンテナンスが不要
- 他では出せない重厚感・高級感がある
反対に、外壁タイルのデメリットは以下のとおりです。
- 初期費用が高い
- 目地だけは劣化する
- 重いため、耐震性が低い
- 施工に技術が必要
外壁タイルの費用相場
タイル自体の価格と施工人件費を合わせて、1㎡あたり「7,000~11,000円」の価格が相場です。
もちろん、これを超える高級品もあります。
外壁タイルの耐用年数
外壁タイルの耐用年数は40年以上、破損などが起こらない限りは半永久的と言われています。
外壁タイルの補修方法
タイルに必要な定期メンテナンスは、約8~10年ごとの目地の打ち替えです。
費用は1mあたり700~1,200円/が相場です。
また、タイルが浮いてしまった場合は、樹脂をタイルに注入して固定する作業が必要です。
費用相場は、1ヶ所につき約500~1,000円です。
まとめ
以上、外壁タイルの性能の違いや選び方、メーカーごとのおすすめ製品などについて解説してきました。
最後に、本記事の要点を振り返ってみましょう。
高級感のある外壁タイルの種類は?
本格的な高級感・重厚感があるタイルは「二丁掛け」か「ブリックタイル」と呼ばれる種類です。これはタイルのサイズによる分類です。詳しく知りたい方は外壁タイルの「サイズ」の種類をご覧ください。
家や景観と合わせやすい外壁タイルは?
光沢をおさえた「マット釉」のタイルを選びましょう。タイルの存在感・汚れにくさともにバランス型で、幅広い素材と無難にマッチします。詳しくは外壁タイルの「釉薬」からくる種類をご覧ください。
汚れや水分に強い外壁タイルは?
もっとも固く吸水性の低い「磁器質」のタイルがおすすめです。バランス型の「せっ器質」でもよいでしょう。詳しくは外壁タイルの「素地」の種類をご覧下さい。
おしゃれな外壁タイルは?
メーカーでいえば、輸入タイルの「アドヴァン」か、色や質感のバリエーションが多い「日東製陶所」の製品がおすすめです。詳しくは外壁タイルのメーカーとおすすめ製品をご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
▼書籍
- みんなの建材倶楽部『使える! 内外装材[活用]シート』エクスナレッジ 2011
- 菊池克弘『住宅リフォーム重要事項32選』都市環境建設 2015
- 建築工事研究会『積算資料ポケット版 リフォーム編 2021年度版』一般社団法人経済調査会 2021