窯業系(ようぎょうけい)サイディングは、国内で約8割のシェアがある外壁材です。
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セメントを主成分とし、窯の中で高温処理されることから「窯業系(ようぎょうけい)」と呼ばれています。
本記事では、窯業系サイディングのメリット、デメリットから費用相場、実際の施工事例までを解説しています。
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監修者:外壁劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
▼略歴・プロフィール |
窯業系サイディングとは
窯業系サイディングは、日本の住宅外壁材として最も多く採用されているタイプです。
日本窯業外装材協会が発表している統計データによれば、「戸建住宅市場における外壁材素材別シェア」は窯業系サイディングが80.2%と圧倒的です。
外壁材 | シェア |
---|---|
窯業系サイディング | 80.2% |
モルタル | 6.8% |
スチールサイディング | 5.1% |
アルミサイディング | 4.7% |
木質 | 0.8% |
ALC | 0.6% |
その他 | 1.8% |
参考:一般社団法人日本窯業外装材協会「統計データ」
窯業系サイディングのシェアが高い理由はコストパフォーマンスの高さにあります。
素材はセメントと繊維質を主成分とし、耐火性やデザインの自由度が高いのが特徴です。それでいてほかの外壁材と比較して施工費用を安価に抑えることも可能です。
窯業系サイディングの種類【メーカー別】
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窯業系サイディングの種類は厚さや長さなどさまざまな種類にわけられます。
長さ:3,030mm、1,820mmが主流
幅:450mm、910mm、1,000mmが主流
表面塗装:アクリル系、シリコン系、フッ素系、無機系など工場塗装したものから、現場で塗装するために無塗装のものまで
窯業系サイディングで代表的なメーカーは「ニチハ」「ケイミュー」「旭トステム外装」の3社です。
それぞれの商品の特徴と代表的な商品は、以下の表の通りです。
メーカー | 製品の特長 | 代表的な商品 |
---|---|---|
株式会社ニチハ | 「マイクロガード」機能で汚れを簡単に落とせる | プレミアムシリーズ Fu-ge |
ケイミュー株式会社 | 親水性、耐震性、断熱性、遮音性に優れ、総合的に評価が高い | 光セラ Legerair |
旭トステム外装株式会社 | サイディングのつなぎ目を目立ちにくくするシーリングレス工法を行う | カーディナル AT-WALL-EXE |
ニチハの窯業系サイディング
ニチハはマイクロガードと呼ばれる、空気中の水分を取り込み、外壁の表面に薄い水の膜を作る機能を備えているのが特徴です。
代表的な商品として「プレミアムシリーズ」や「Fu-ge」が挙げられます。

プレミアムシリーズは「プラチナコート30」と呼ばれる、厳しい基準をクリアした耐候性を備えている商品です。
長期間美観を保ってくれるため、メンテナンスコストを減らしたい人などにおすすめです。
「Fu-ge」は外壁どうしの継ぎ目が目立ちにくい「四方合いじゃくり」仕様となっており、上質な外壁をイメージさせることが可能です。
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まずは商品ページから外壁材のイメージを掴んでみてください。
ケイミューの窯業系サイディング
ケイミューの外壁材は「親水性・耐震性・断熱性・遮音性」の4点に特徴をもつ商品が揃っています。
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親水性とは「水をはじかない性質」のことで、水をはじかないことで外壁の汚れを浮かして落とす効果を発揮します。
ケイミューの代表的な商品として挙げられるのが、「光セラ」や「Legerair」などです。

光セラは「外壁の大敵である紫外線や雨風を味方につける」という発想から、太陽の力で外壁の汚れを分解し、雨水で洗い流すを実現しています。
自然が自動的に掃除してくれるため、基本的なメンテナンスは不要。経済的な外壁材を探している方におすすめです。

「Legerair(レジェール)」は深彫りによる陰影を施し、外壁の表情を豊かにするのが特徴になります。
外壁材をおしゃれにさまざまな角度で楽しみたい人におすすめです。旭トステム外装の窯業系サイディング
旭トステム外装の窯業系サイディングは、さまざまなデザインを展開していることはもちろんのこと、サイディング同士のつなぎ目を目立ちにくくするシーリングレス工法を採用しているのが特徴です。
代表的な商品として「カーディナル」や「AT-WALL-EXE」が挙げられます。

カーディナルはシーリングレス工法を用いて、住まいの美しさを際立たせているのが特徴の窯業系サイディングです。
シーリングが目立たないスッキリとした仕上がりになるため、モダンな印象の外観にしたい方におすすめです。

「AT-WALL EXE」はフッ素樹脂「ルミフロン」によるセルフッ素コートが施されており、耐候性に優れているのが特徴です。
木目柄やボーダー柄など陰影に富んだ豊富なデザインが用意されているため、落ち着いた雰囲気で自分好みの外観にしたい方におすすめです。
窯業系サイディングとほかのサイディング材を比較
窯業系サイディング以外にも金属サイディングや木質系サイディングなどのサイディング材があります。
窯業系サイディングとほかのサイディング材の比較は以下の表の通りです。
サイディング種類 | デザイン性 | 機能性 | 初期コスト | メンテナンスコスト | 耐用年数 | こんな人におすすめ |
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窯業系サイディング | ◎(種類が豊富) | ○(断熱・防火性に優れる) | ◎(比較的安価) | △(定期的な塗装・シーリング補修が必要) | 20〜40年 | コストを抑えつつ、デザインにこだわりたい人 |
金属サイディング | ○(シンプル・モダンなデザインが多い) | ◎(耐久性・断熱性が高い) | ○(窯業系よりやや高め) | ◎(メンテナンス頻度が少なめ) | 20〜40年 | 耐久性重視で、長くメンテなしで使いたい人 |
木質系サイディング | ◎(自然の風合いが魅力) | △(防虫・防腐処理が必要) | △(比較的高額) | △(定期的な塗装や防腐処理が必須) | 15〜40年 | 自然素材の家にこだわりたい人 |
樹脂系サイディング | ○(カラーバリエーションが豊富) | ◎(メンテナンスフリー) | ○(窯業系と同程度) | ◎(塗装不要で維持費が安い) | 20~50年 | メンテナンスを極力減らしたい人 |
窯業系サイディングとよく比較されるサイディング材が「金属サイディング」です。
金属サイディングについては、以下の記事に詳細をまとめていますので、気になる方は参考にしてみてください。
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ほかのサイディング材と比較することで、窯業系サイディングでリフォームすべきかをより判断できます。
窯業系サイディングのメリット
窯業系サイディングのメリットとしては、以下の4点が挙げられます。
窯業系サイディングのメリット
- デザイン性の豊富さ
- 耐火性の高さ
- 初期コストを抑えられる
- 施工期間が短い
デザイン性の豊富さ
窯業系サイディングは、レンガ調や石目調、木目調など多彩なデザインが揃っているのが特徴です。
豊富なデザインが用意されているため、外壁の自由度はほかの外壁材を圧倒しています。
さらに塗装や加工技術が発展し、リアルな質感を再現できるため、外観にこだわりたい方に適しています。
耐火性の高さ
窯業系サイディングは不燃材料として認定されており、別名「防火外壁材」とも呼ばれています。
火に対する耐久性を示す「耐火等級」では、3~4級の窯業系サイディングがほとんどです。3級は約45分火熱を遮ることができ、4級は60分以上の火熱を遮ることを基準としています。
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つまり万が一の火災が発生した際、すぐに延焼することなく避難する時間を確保できることになります。
初期コストを抑えられる
窯業系サイディングはほかの外壁材と比較すると大量に生産できる外壁材になります。市場で広く流通しているため、材料費は必然的に抑えられます。
さらに施工方法がシンプルなため、職人技のような高い技術は求められないものになります。つまり経験が浅い職人でも容易に設置ができ、さらに施工期間も短いことから人件費を抑えることも可能です。
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材料費、人件費の両面を安く抑えられることから、初期コストを抑えて施工が行えます。
施工期間が短い
窯業系サイディングでリフォームする場合の施工期間は、約1か月程度です。
ほかのサイディング材と比較しても施工工程が単純で、工場で生産されたサイディングボードをそのまま利用するため工期は短くなります。
工期を短くして早く外壁を整えたい場合などはおすすめです。
窯業系サイディングのデメリット
窯業系サイディングのデメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
窯業系サイディングのデメリット
- メンテナンスコストがかかる
- 蓄熱性がある
- サイディングが重い
メンテナンスコストがかかる
窯業系サイディングの主成分であるセメントは、水分を吸収しやすく、塗装の劣化が進みやすい傾向にあります。
そのため10~15年ごとに再塗装を行う必要があり、メンテナンスコストがかかってきます。
メンテンナスを行わないと劣化症状が進行し、耐用年数よりも早く大規模な張り替え工事などが必要になるため、必ず行うようにしましょう。蓄熱性がある
蓄熱性とは文字通り、熱を蓄えてしまう性質のことです。窯業系サイディングはこの蓄熱性によって外壁にあたった直射日光の熱が、そのまま室内へ伝わりやすい素材になっています。
夏場などは熱を逃がすことができず、室内が高温になってしまう恐れがあります。-
蓄熱性に対しては、「通気金具留め工法」や「遮熱効果のある塗料の使用」「下地とサイディングの間に断熱性を設置」など、いくつかの手法で解決が可能です。
サイディングが重い
セメントが主成分の窯業系サイディングはほかのサイディング材と比較すると、重量がある外壁材になります。
重量が重いことで建物への負担が大きくなることはもちろんのこと、サイディングのつなぎ目には、シーリング目地が必要なこともデメリットです。
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つなぎ目はシーリングレス工法によって解決は可能ですが、気になる点については必ず業者と相談するようにしてください。
窯業系サイディングがおすすめな人
窯業系サイディングがおすすめな人は「デザインにこだわりたい人」「コスパを重視したい人」です。
いずれか、あるいは両方を重視したい人は窯業系サイディングを積極的に検討してみてください。
デザインにこだわりたい人
木目柄、石目調、コンクリート柄、タイル柄、ライン柄など、色や形のバリエーションが豊かにあります。
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デザインを組み合わせてオリジナルの外壁にできるので、好みの外壁を作れます。
コスパを重視したい人
窯業系サイディングは外壁材の中でシェア率が高く、大量生産が可能なサイディング材です。
大量生産が可能なため「材料費」は安く、施工工程も複雑ではないため「施工費」も安く済みます。
さらに工期も短い期間で完了するため、早く安く自分好みの外壁に整えられます。
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初期費用が抑えられるので、コスパを重視したい人は窯業系サイディングが第一候補になるでしょう。
窯業系サイディングを選ぶと後悔する?
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窯業系サイディングを選ぶと後悔するという声もありますが、主に以下のような時に該当します。
窯業系サイディングを後悔しやすい理由
- 寒冷地で利用している
- 家の中が暑くなりやすい
- メンテナンス回数が多い
寒冷地では「凍害」と呼ばれる劣化症状が起こりやすい地域です。
窯業系サイディングは水分を吸いやすい素材であるため、外気温によって凍結と融解を繰り返し、ひび割れなどの症状につながってしまいます。
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費用を考えて窯業系サイディングにしたが、「寒冷地だったためすぐに劣化してしまった」という人も少なくありません。
また、熱も吸収しやすい素材であるため、夏は外気温を取り込んでしまい、家の中が暑くなりがちです。
日当たりの良い家だと、夏場はとくに大変になるため、ほかのサイディング材にしておけばという人もいます。
最後に「メンテナンス回数」です。窯業系サイディングの素材は防水性がなく、塗膜が劣化しがちになるため、往々にしてメンテナンスが必要になります。
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メンテンナス回数が多く、費用負担が大変という声もよく聞かれるものです。
窯業系サイディングの耐用年数とメンテナンス頻度
窯業系サイディングは耐用年数に応じて、定期的なメンテナンスを行うことが大切です。
とくに窯業系サイディングは防水効果が薄いため、適切にメンテナンスを実施する必要があります。
耐用年数
窯業系サイディングの耐用年数は、製品にもよりますが一般的には20年~40年です。ただし、この数字は外壁自体の交換が必要になるまでの目安となります。
定期的なメンテナンスはこれよりも早いスパンで行う必要がある点に注意してください。
メンテナンスを怠ると耐用年数が縮まり、外壁本来の性能が発揮できなくなってしまう可能性があります。
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ちなみに、金属サイディングの耐用年数は30年~40年前後です。窯業系サイディングと同等か少し長い耐用年数となっています。
メンテナンス頻度
窯業系サイディングは、日ごろから綺麗にしておくことで見た目や耐久性を延ばすことが可能です。
目立つ汚れがあれば、ホースでの水洗いや雑巾など柔らかい布で拭き取るようにしましょう。鳥の糞やカビなどは、中性洗剤を使うことで綺麗に落せます。積雪がある地域では土台部分や吹き溜まりに雪が溜まりやすくなるので、こまめに除雪すると藻やカビの発生を抑制できます。
高圧洗浄や固いブラシなどは、接合部にある隙間からの漏水や壁面に傷がつく可能性があるためおすすめできません。
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手の届かない高い場所にある汚れは安全に気を付け、危険な場合は無理せずに業者に頼むようにしましょう。
業者による点検・補修は5~10年周期
窯業系サイディングは、5年~10年を目安に業者による点検や補修が必要です。
年月が経ってくると、壁面を触ると白い粉が付く状態(チョーキング)になったり、表面やシーリング部分にひび割れなどの劣化が見られるようになります。このような症状が出たら、業者による点検や塗り替えを検討すべきタイミングです。
ハウスメーカーや工務店の保証期間内であれば、無料で点検してくれるケースも多くあります。部分的な劣化や傷の補修であれば費用もそれほどかかりません。
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外壁の剥離や反りなどが大きい場合は張り替えが必要になり、費用も100万円以上かかることが多いです。しかし、5年~10年程度で張替をするケースは非常に稀となります。
メーカー推奨のメンテナンススケジュール
窯業系サイディングでトップシェアのニチハでは、推奨しているメンテナンススケジュールがあります。
こちらのメンテナンススケジュールを見ると、5年ごとの定期点検が推奨されています。また、製品によってばらつきがあるものの、塗り替えはおおむね15年~25年ごと、張り替えは30年~40年ごとが目安です。
サイディングリフォームの費用相場
窯業系サイディングへのリフォームは、工法によって大きく金額が変化します。
具体的には「張り替え」と「外壁カバー工法」です。
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それぞれがどのような工法なのか、費用はどの程度かかるのかを解説していきます。
張り替えの場合
張り替えとは、葺き替え工事とも呼ばれる工法で、現在利用している外壁材を剝がし、内部の劣化症状を補修したうえで新しい外壁材へ張り替える工法のことです。
家の内部のメンテナンスができるため、安心した住環境の整備につながります。
一般的な約30坪住宅の外壁を窯業系サイディングに張り替えた際の費用相場は、180~200万円前後です。
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張り替えの場合は既存の外壁材の撤去をする必要があるため、解体撤去費用と廃棄費用が発生します。
カバー工法(重ね張り)の場合
カバー工法とは、現在の外壁材の上から新しい外壁材を重ね張りする工法のことです。
外壁カバー工法を実施することで、防音性や断熱性の向上が見込めます。
一般的な約30坪程度の外壁を窯業系サイディングでカバー工法した場合の費用相場は、150万円前後です。撤去費用がかからない分、張り替えよりも総額を抑えられます。
一方で、上からサイディングボードを貼り付けるため建物の重量が増加し耐震性が弱くなってしまうのがデメリットです。
そのため、塗装しても良くならないモルタル壁の上に、重量が軽い金属系サイディングを貼るケースも少なくありません。
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他の外壁材から窯業系サイディングに変更したい場合は、建物への負担を軽減するため張り替えの方がおすすめです。
外壁を窯業系サイディングにした事例
ここでは、ヌリカエを利用して実際に外壁を窯業系サイディングに張り替えた方の事例をご紹介します。
施工写真とともに、費用と工期なども併せてご紹介していますので、窯業系サイディングでの外壁リフォームを検討している方の参考になりましたら幸いです。窯業系サイディングで同系色に貼り替えた事例
施工費用 | 149万円 |
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延床面積 | 99.17㎡ |
工期 | 21日 |
外壁を一新しているため、150万円近い費用がかかっています。
窯業系サイディングでモダンでシックな印象の外壁に貼り替えた事例
施工費用 | 249万円 |
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延床面積 | 132.23㎡ |
工期 | 39日 |
3階建てであることから、貼り替え費用も相場より高めになっています。
窯業系サイディングについてのまとめ
窯業系サイディングは、国内で圧倒的なシェアを誇る外壁材です。
コストパフォーマンスが高くデザインも豊富なことから、窯業系サイディングでリフォームを考える方は多くいます。-
まずは紹介した代表的なメーカーの商品を確認し、業者とどんなデザインが良いかを相談してみてください。