アパートの外壁塗装を行う際、トラブルやクレームが発生するケースは少なくありません。しかし、外装の見栄えは新規の入居希望者の数や将来的な資産価値にも関わることから、施工を実施するかお悩みのオーナーも多いのではないでしょうか。
アパートの外壁塗装時に発生するトラブルや対応方法を知ることで、回避できるトラブルもあります。この記事では外壁塗装で発生し得るトラブル事例や、アパートオーナーが行うことをはじめ、実際にどの程度の費用がかかるのかをご紹介します。
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監修者:外壁劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
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アパートの外壁塗装は資産価値を守るために必要なリフォーム
外壁塗装の効果は、見た目を綺麗に整えるだけではありません。外壁塗装に使用される塗料には防水効果があるため、外壁材を雨風から保護する役割を持っています。
塗装せずに外壁が雨水に晒されると、壁内部の骨組みである躯体(くたい)が腐敗し、家屋の耐久性が低下。長期的に資産価値を下げてしまう要因となります。通算のリフォーム費用を抑えたり、将来的な売却価格を下げないためにも、定期的な外壁塗装の実施が必要です。
外壁に使われる塗料の耐用年数は、10年から20年とされているため、アパートでもおおよそ10年周期で塗装しましょう。
ただし、塗料にはアクリル・ウレタン・シリコン・フッ素といった種類があり、それぞれで耐用年数が異なります。所有しているアパートの塗料と塗装歴を確認して、外壁塗装の周期を計算しておくと安心です。
塗料の種類と耐用年数について詳しく知りたいという方は、下記の記事をご覧ください。
「塗料の相場価格」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「外壁塗装の塗料10種類の特徴・価格は?おすすめ塗料と選び方も紹介」
アパートでの外壁塗装の注意点・トラブル事例
アパートの外壁塗装はクレームが発生しやすい傾向にあります。ここではアパートでの外壁塗装時に起きやすいトラブルについて説明します。
足場組み立てでは騒音トラブルに注意
外壁を塗装するのに必要な足場には鉄パイプを使用するため、半日から1日は金属同士がぶつかる音が周囲に響きます。
入居者はもちろん、周辺の住宅・施設からクレームが入る恐れがあるため、注意しましょう。
ただし、事前の周知、挨拶などを行ってくれる業者であれば理解は得やすくなるため、業者選びの際のチェックポイントにするとよいでしょう。
高圧洗浄は水飛沫に注意
塗装を剥がれにくくするため、塗装前には外壁や屋根の汚れを落とします。職人が使う業務用の高圧洗浄機では、150kg以上の圧力がかかるものを使用するため、水飛沫が発生します。
外壁の汚れを含んだ水飛沫が飛散するので、洗濯物などに影響が出ることを、事前に告知しておきましょう。また、高圧洗浄で発する騒音もトラブルの原因になるため、注意してください。リフォーム業者のマナーによるトラブル事例
依頼する業者によっては、喫煙やポイ捨てといったマナー違反を犯す場合があります。こういった行動は近隣住民だけでなく、通行人からのクレームが発生する可能性があるため、業者選びは慎重に行いましょう。
アパートの外壁塗装にあたりオーナーがやるべきこと
上述したように、アパートでの外壁塗装ではクレーム・トラブルが発生する恐れがあります。しかし、オーナーの対応によってある程度回避できるトラブルもあります。ここからはトラブル回避のためにアパートオーナーが行うことを紹介します。
色・デザイン選び
外壁塗装の色・デザイン選びは、事前に入居者の好みを調査するのがおすすめです。
既存の入居者に今後も住み続けたいと思ってもらえるように、入居者層にあわせた色やデザインにしましょう。なお、グレーとクリーム色の2色を使ったツートンカラーは、年齢を問わず人気があります。
また、色選びの際には小さい図面だけで決めず、さまざまなパターンで検討するようにしましょう。
蛍光灯と太陽光といった光の当たり方や面積によって、色の見え方は変化します。想定した色にならずに後悔するケースもあるため、慎重に検討しましょう。
近隣住宅へ工事の事前告知
工事の告知は最低でも1週間前には行います。工事の日程が決定した段階で、なるべく早く告知するようにしてください。
告知の際には理解を得るための工事理由を記載しておくと、トラブルの回避に繋がります。なお入居者には以下のような情報を伝えておきましょう。
- 工事予定日・工事時間
- 塗料にはニオイがあること
- 騒音が発生すること
- プライバシーや採光に関して不自由が生じること
- 窓の開閉ができない時間
- ベランダ・玄関前の廊下に荷物を置かないように依頼
- 車や自転車の移動を依頼、または業者がカバーをかけることを伝える
- 緊急時の連絡先
また、隣接する住宅にも工事日程やニオイ・騒音が発生することを伝えましょう。
あいさつを行う際には粗品を用意しておくこともポイントです。依頼するリフォーム業者によっては粗品を用意してくれる場合もあるので、重複しないように確認しておきましょう。
工事期間中は2日に1回は現場へ足を運ぶ
アパートの外壁塗装には、おおよそ2週間から3週間ほどかかります。
工事期間中、2日から3日に一度は現場に行き、工事の状況を確認するようにしましょう。実際に塗装を施すことで、思っていた色・デザインと異なる場合もあります。
また、現場に足を運ぶ際には、時間に注意しておきましょう。
作業時間中は業者が集中しているため、お昼の休憩時などに合わせるのがおすすめです。ただし、休憩時間を無駄にしてしまわないよう、要件は手短に伝えて確認を行うようにしてください。
施工後の確認とアフターケア
外壁塗装が完了したら、塗り漏れや不備がないかを自身の目で確認しましょう。
職人が作業時に室外機や物干し竿などの荷物を移動する場合があるため、元の位置に戻っているかの確認も行います。
また最後に入居者や近隣住宅へお礼をすることも忘れてはいけません。
リフォーム業者によっては、あいさつ回りに同行してくれるケースもあります。業者から直接お礼や謝罪をすることで、トラブルがあっても不満を残しにくくなります。
アパート外壁塗装の費用相場
ここからはアパート外壁塗装の相場について、詳しく解説します。
外壁塗装を行う際には、足場代・作業費・塗料代・人件費・現場管理費・廃材処理費などの費用が発生します。これに加えて、塗装する場所や工事時期で費用が加算されるケースが一般的です。
費用はアパートの大きさによって変動するので、所有する物件の坪数などを事前に確認しておきましょう。
足場代の費用目安
足場代は架面積1㎡あたり800円から1,000円が相場です。外壁塗装に関わる費用の約20%が足場代として使われています。
足場の設置と同時に塗料の飛散を防止するメッシュシートを設置するケースがあり、シートの設置費用も含まれているのが一般的です。
所有するアパートでの足場架面積は、以下のように計算できます。
足場架面積 = 建物の外周(m) × 建物の高さ(m)階数 × 3.5mでおおよその面積を求められます。
計算した足場架面積に1㎡あたりの相場をかけることで、所有する物件でのおおよその足場代が計算可能です。大きなアパートほど足場代が高額になることを覚えておきましょう。
作業費の費用目安
アパートの外壁を塗装する際には、外壁の汚れを落としたり、塗装箇所以外に塗料がつかないように養生したりと、さまざまな作業が発生します。
おおよその作業内容と相場は、以下の表を参考にしてください。
作業内容 | 相場 |
---|---|
高圧洗浄 | 200円~400円/㎡ |
養生 | 300円~500円/㎡ |
コーキング:増し打ち | 700円~900円/㎡ |
コーキング:打ち換え | 500円~700円/㎡ |
材料運搬(交通費含む) | 20,000円~30,000円/一式 |
洗浄しないと新たに塗装をしても剥がれやすくなり、耐久力が低下してしまいます。また、塗装箇所以外に塗料が付着しないように、養生を行うことも重要です。
コーキングは、ひび割れや外壁材の隙間を埋める工事のことです。素材には樹脂が使われており、地震や振動の緩衝・防水・補修のために行います。元のコーキングの上から塗る「増し打ち」と撤去して新たに塗り直す「打ち換え」という2種類の工法があり、価格が異なるので注意しましょう。
外壁塗装の際には細かい作業が多く、外壁の状態によってかかる費用は異なります。これらの作業内容は見積もり書の内訳で確認可能です。
見積もりに書かれていない場合は、作業が行われない可能性もあるため、必ず確認しましょう。
塗料の費用目安
塗料の相場は種類によって異なります。基本的に耐用年数が短いほど安く、長いほど高いことが特徴です。アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素の4つのグレードがあり、それぞれの相場は以下のようになっています。
グレード | 耐用年数 | 相場 |
---|---|---|
アクリル | 4年~5年 | 1,400~1,600円/㎡ |
ウレタン | 6年~8年 | 1,700~2,200円/㎡ |
シリコン | 10年~12年 | 2,300~3,000円/㎡ |
フッ素 | 12年~15年 | 3,800~4,800円/㎡ |
「塗料の相場価格」について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「外壁塗装の塗料10種類の特徴・価格は?おすすめ塗料と選び方も紹介」
人件費の費用目安
外壁塗装にかかる費用のうち、約30%を占めているのが人件費です。1日で1人あたり15,000円から20,000円ほどの人件費が支払われています。
ただし、相場は地域や職人歴などで異なるので、目安程度に押さえておきましょう。
人件費は「人工(にんく)」という単位で計算されます。
1人の職人が1日でできる作業が1人工です。工程や規模によって人工が設定され、日によって人数が異なる場合があります。
現場管理費・廃材処理費の費用目安
外壁塗装に関わる諸経費や廃材処理費を現場管理費として請求される場合があります。
担当する人数や現場によって上下しますが、1日あたりの費用は20,000円前後が相場です。外壁塗装費用の全体でみると、10%から15%ほどが現場管理費・廃材処理費にあたります。
付帯部塗装の費用目安
アパートを含む建築物には外壁以外のパーツがあり、「付帯部」と呼ばれています。
主に軒天(のきてん)・幕板(まくいた)・雨樋(あまどい)のような付帯部の塗装は、通常の相場と異なる場合があるので注意しましょう。
主な部位と相場は、以下の表をご覧ください。
部位 | 相場 |
---|---|
軒天(のきてん) | 1,200円~1,500円/㎡ |
雨樋(あまどい) | 600円~2,000円/㎡ |
雨戸(あまど) | 2,000円~3,000円/枚 |
鉄扉(てっぴ) | 3,000円~5,000円/枚 |
仕切り板(しきりいた) | 2,000円~4,000円/枚 |
アパート外壁塗装では業者の選定が重要
今回はアパートオーナーが外壁塗装時に実施することや、相場についてをご紹介しました。
アパートでの外壁塗装は、入居者や近隣住民とのトラブルが発生する恐れがあるため、オーナー自身の配慮だけでなく、業者の行動も重要です。業者選びは慎重に行いましょう。
もし、業者の選定にお悩みの場合は「ヌリカエ」を利用してみてはいかがでしょうか。
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