屋根や外壁の塗装をお考えの方は「遮熱塗料」がどのような塗料なのか気になっている方も多いかと思います。
夏場の室温上昇を抑える効果があると言われていますが「そもそもどんな塗料なの?」、「本当に効果ある?」といった不安やお悩みを抱えているのではないでしょうか。
そこで本記事では、遮熱塗料とはどのような塗料で、どんなメリットやデメリットがあるのか詳しくご紹介します。
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本当に効果があるのかについてや、気になる価格についてもご紹介していますので、ご自宅の屋根を遮熱塗料にするか検討している方の参考となれば幸いです。
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監修者:外装劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
▼略歴・プロフィール |
遮熱塗料とは
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遮熱塗料とは、太陽光を反射する効果を持つ塗料のことです。
正式名称を「高日射反射率塗料」と言い、2011年に、日本塗料工業会によってJIS K5675という工業規格が定められました。
遮熱塗料を塗布した屋根や外壁は太陽光を反射するため、室内の温度上昇を抑制する効果が期待できます。
遮熱塗料はその性能から省エネ商品として国に推奨されており、自治体によっては遮熱塗料での塗装に補助金がおります。
(参考記事:【2021年版】外壁塗装で補助金・助成金を受け取るには?条件・地域・申請方法)
遮熱塗料と断熱塗料の違い
似たような性能を持つ商品として「断熱塗料」がありますが、断熱塗料と遮熱塗料には明確な違いがあります。
遮熱塗料は熱を反射する塗料、断熱塗料は熱伝導を抑える塗料です。つまり、室内の暑さを軽減するしくみが異なります。また、遮熱塗料は「屋外の熱の侵入を抑える」という暑さ対策の効果のみですが、断熱塗料は暑さ・寒さの両方に効果があります。
【遮熱塗料と断熱塗料の違い】
種類 | 耐用年数 | 費用相場 | 性能 |
---|---|---|---|
遮熱塗料 | 8年~12年 | 外壁:2,000円~3,000円/㎡ 屋根:2,500円~3,500円/㎡ |
暑さを軽減する効果はあるが、冬の寒さ対策にはならない |
断熱塗料 | 15年~20年 | 外壁:3,000円~4,000円/㎡ 屋根:3,500円~4,500円/㎡ |
室内の温度変化を軽減するため、暑さ対策だけでなく寒さ対策にもなる |
遮熱塗料は効果なしって本当?
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遮熱塗料について調べていると「遮熱塗料は効果がない」といった情報を耳にすることがあります。
ここまで、室内の温度抑制や屋根材の劣化スピードを遅らせる効果に期待できるとご紹介してきた遮熱塗料ですが、実際には効果がないのでしょうか?
結論、遮熱塗料は効果はあります。ただし、期待通りの効果を実感できるかは状況によって異なるでしょう。
こちらは、環境省による遮熱塗料の実験結果をまとめたものです。この実験によると、遮熱塗料を塗ることで夏の時期の室温を1.8℃低下させる効果があることが証明されています。
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「遮熱塗料を塗っても効果がない」というのはこの実験結果を見る限り、間違っていると言えます。
ただし、この実験は対象が工場の屋根であることに留意してください。面積が大きい工場の屋根は、一般住宅よりも遮熱塗料による効果を感じやすくなっているからです。
ご自宅の屋根や外壁に遮熱塗料を塗るか悩んだときは、本当に塗る価値があるのかどうか業者に相談することをおすすめします。
遮熱塗料の効果がないとされている理由
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遮熱塗料の効果がないとされている理由として、以下の6つが挙げられます。
- 遮熱塗料の耐用年数やグレードが低いから
- 塗りムラや汚れがあるから
- 適切なメンテナンスができていないから
- 遮熱塗料のみだと対策は不十分だから
- 遮熱塗料の効果が発揮しにくい環境だから
- 断熱効果ではないから
遮熱塗料の耐用年数やグレードが低いから
塗料は素材によって成分の配合量が異なるため、耐用年数も異なります。
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基本的に高価な塗料ほど耐用年数も長いことがほとんどです。
以下は遮熱塗料ごとの種類と耐用年数の一覧表になります。各塗料についての詳細は、塗料名をクリックすると解説ページに飛びますので、参考にしてみてください。
塗りムラや汚れがあるから
塗料を施工した際に「塗リムラ」がある場合は、十分な遮熱効果を発揮できません。
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塗りムラが起こる原因は、職人の技術不足や経験の低さが理由になります。
遮熱塗料にはきれいに塗るために、高い技術が必要な塗料が存在しているため、一定の技術が必要な塗料はベテランの職人に対応してもらう必要があります。
また、ホコリなどが被っている場合でも十分な効果を発揮できないため、定期的な洗浄が必要です。
適切なメンテナンスができていないから
外壁や屋根は施工した際の状態のままだと、劣化が進行してしまい、塗料の効果も弱まってしまいます。
とくに耐用年数を超えた塗料をそのままにしておくと、美観を損ねることに加え、深刻な劣化につながってしまうため、耐用年数に応じて定期的に塗り替えることが大切です。
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塗装後には必要なメンテナンス方法や時期について、業者に確認しておくとよいでしょう。
遮熱塗料のみだと対策は不十分だから
遮熱塗料には室温の上昇を防いだり、熱による劣化を防いだりしますが、対策が不十分だと思ったような効果を発揮しない場合があります。
たとえば思ったよりも室温の上昇が抑えられない場合は、遮熱塗料に加えて遮熱シートのような断熱材を加えるのが効果的です。
ホームセンターなどで簡単に購入でき、自分で貼ることも可能なため、遮熱塗料の効果をさらに発揮してくれます。
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業者に依頼して遮熱シートを屋根に貼ってもらうことも効果的です。
遮熱塗料の効果が発揮しにくい環境だから
外壁の環境によっても遮熱塗料の効果が発揮しにくいケースがあります。
たとえば日当たりの悪い北側の外壁に遮熱塗料を塗ったとしても、反射する光の量も少ないめ、室温に大きな変化は生まれません。同様に寒冷地なども光の量が少ないため、効果を発揮しにくい環境といえます。
また、遮熱塗料はあくまでも熱を室内に伝えにくくする塗料であり、保温ができる塗料ではないため、注意が必要です。
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寒冷地の住宅であれば、遮熱塗料よりも断熱塗料を検討するのがおすすめです。
断熱効果ではないから
遮熱塗料には断熱効果はありません。遮熱と断熱の違いは以下の通りです。
遮熱 | 断熱 | |
---|---|---|
目的 | 日光を反射して、熱を室内に侵入するのを防ぐ | 室内の熱を逃がさないようにする |
効果 | 夏の室温を下げる | 冬の室温を保温する |
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つまり遮熱は温度の上昇を防ぐ役割を担い、断熱は温度の保つ役割を担います。
遮熱塗料だけでは熱をコントロールすることはできません。室温を快適にするためには、断熱塗料を使用することが望ましいです。
目的に応じて塗料の使い分けをするとよいでしょう。
遮熱塗料のメリット
遮熱塗料のメリットには、主に下記の4つがあります。
- 室温の上昇を抑えられる
- 節電・省エネにつながる
- 建材の熱損傷を防ぐことができる
- 助成金を使って塗装工事ができる可能性がある
室温の上昇を抑えられる
遮熱塗料のもたらす効果の一つは、「室温の上昇を抑えられる」ことです。
遮熱塗料を屋根や外壁に塗ることで、塗布面は太陽を反射します。
その結果、屋根材や外壁材に熱がこもらなくなり、室内の上昇の抑制につながります。
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日差しそのものを反射することで、熱の発生自体を防ごうというのが遮熱塗料の狙いなのです。
節電・省エネにつながる
遮熱塗料のメリットの2つ目は、「節電・省エネにつながる」ということです。
実は、夏の日中(14時頃)に一般家庭で消費する電力のうち、58%を占めるのがエアコンによる電力だと言われています。
そして、このエアコンの稼働に伴い、CO2も多く排出されています。
しかし、遮熱塗料で室温の上昇を抑えることで、エアコンの使用量を10%~20%ほど削減できるのです。
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電気代に換算すると、おおよそ1,000~2,000円/年程の節電効果と見積もることができます(※延べ床面積30坪程度の一般住宅を想定)。
建材の熱損傷を防ぐ
遮熱塗料のもたらすメリットの3つ目は、「建材の熱損傷を防ぐ」ことです。
「屋根材・外壁材は、熱の作用を受けることで劣化が進み、耐用年数が短くなることがある」と言われています(科学的な正式名称ではありませんが、ここでは便宜上「熱損傷」と呼ぶことにします)。
遮熱塗料は、表面温度の上昇を抑制する効果によって熱の作用を軽減するため、熱損傷による建材へのダメージも減らします。
しかしながら、屋根材や外壁材は、湿度や風雨や高度など他の様々な条件と合わさって、徐々に劣化していくものです。
あくまでも、大切な建物を守っていくための手段の一つとして、検討するようにしましょう。
助成金を使って塗装工事ができる可能性がある
遮熱塗料による塗装のメリットの4つ目は、「助成金を使って塗装工事ができる可能性がある」ということです。
自治体によっては、遮熱塗料での塗装工事に助成金を給付している場合があります。
これは遮熱塗料による省エネ効果を期待したもので、一度の塗装工事につき10万円~30万円ほどの助成金がおります。
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助成金制度はすべての自治体に設けられているものではありませんが、遮熱塗料での塗装を検討しているのであれば、お住まいの自治体の助成金制度を調べてみるのをおすすめします。
「外壁塗装の助成金」については、以下の記事で詳しく解説しています。
遮熱塗料のデメリット
遮熱塗料にはデメリットもあるため、きちんと理解しておきましょう。
- 通常の塗料よりも価格が高い
- 劣化すると遮熱性能が落ちる
- 保温効果はない
通常の塗料よりも価格が高い
遮熱塗料は、その性能から一般的な塗料と比較すると塗料代と施工費用がやや高くなる傾向があります。
一般的な塗料との価格差の目安は1.5倍前後です。そのため、屋根面積によってはその価格差が数十万になることもあるでしょう。
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地域や家の構造によっては塗料効果を実感しづらい場合もあるので、遮熱塗料にするかどうかは慎重な判断が必要です。
劣化すると遮熱性能が落ちる
遮熱塗料の効果は永続的に続くわけではなく、年月が経つにつれて遮熱性能も徐々に落ちていきます。
塗膜の劣化や表面が汚れていると太陽光を反射しづらくなるため、遮熱性能を保つには定期的なメンテナンスが必要です。
保温効果はない
遮熱塗料には室内の温度を保つ効果はありません。遮熱塗料はあくまで太陽光を反射し、表面や室内温度の上昇を防ぐものです。
逆に、冬場は逆に室温が上がりにくくなってしまうことに注意してください。
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北海道・東北地方など、冬場の寒さが厳しい地域には不向きといえるでしょう。
他の外壁塗装の塗料について知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
>>「【2025年最新】外壁塗装の塗料12種類の特徴・価格は?選び方や人気ランキングも紹介」
遮熱塗料は価格が高い?
遮熱塗料は、一般的な塗料と比べて、塗料代と施工費用が高くなります。
例えば、代表的な塗料メーカーである「日本ペイント」が販売している、通常のシリコン塗料と遮熱性能のあるシリコン塗料の施工価格は下記の通りになります。
施工価格(金属屋根の場合) | |
---|---|
通常のシリコン塗料(シリコンルーフⅡ) | 3,990円/㎡ |
遮熱性能のあるシリコン塗料(サーモアイSi) | 6,240円/㎡ |
上記2つの塗料の価格差は、2,250円/㎡です。屋根面積が60㎡の場合、最終的な施工価格の差は、135,000円となります。
このように、一般的な塗料と遮熱塗料の価格差は10万円以上です。屋根面積が広くなるほど、その価格差が広がるため注意してください。
遮熱塗料の耐用年数
一般的な塗料と遮熱塗料の耐用年数に違いはありません。塗料の耐用年数は、塗料に含まれる樹脂によって変わるためです。
例えば、高耐久のフッ素塗料は、遮熱性能あるシリコン塗料よりも耐用年数が長くなります。
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「遮熱性能がある = 耐用年数が長くなる」ということではありませんので注意してください。
耐用年数を知るためには、塗料に使われている樹脂の種類を確認しましょう。
下記は、塗料に含まれる樹脂ごとの耐用年数の一覧です。
塗料の種類 | 耐用年数 |
---|---|
アクリル塗料 | 5年~7年 |
ウレタン塗料 | 8年~10年 |
シリコン塗料 | 10年~15年 |
ラジカル塗料 | 12年~16年 |
フッ素塗料 | 15年~20年 |
無機塗料 | 25年~30年 |
高耐久の遮熱塗料にしたい場合は、フッ素塗料や無機塗料など耐用年数の高い樹脂であるかを確認するようにしましょう。
まとめ
遮熱塗料は室温と屋根表面温度の抑制効果がある、高性能塗料です。エコにもつながることから、近年自宅の屋根や外壁に塗るお家も増えています。
しかし、通常の塗料よりも価格が高いこと、期待するほど効果を実感できないケースもありますので、遮熱塗料を検討する際は業者に相談の上決めると後悔しません。
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「どの塗料を選んでいいか分からない……」という方は、一度塗装会社に意見を聞いてみることをおすすめします。
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