カラーベストは屋根材として人気ですが、「本当に選んでいいのかな?」と迷ってしまう人も少なくありません。
本記事ではカラーベストの特徴や費用、選び方について解説しています。
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カラーベストを検討中の方に向けて、後悔しないためのポイントをまとめていますので参考にしてみてください。
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監修者:外壁劣化診断士 小林 成光
600件以上の現地調査を実施する過程で得た専門性を生かし、日本発のネット見積もりシステムでビジネスモデル特許を取得。ヌリカエにて、外装工事の専門家として、顧客・加盟企業のサポート・コラムの監修に従事。
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カラーベストとは?
カラーベストとは、住宅でよく使われているスレート屋根材の一種です。薄い板状の形をしており、セメントを主原料に繊維を混ぜて成形されています。
瓦と比べてとても軽く、扱いやすいのが大きな特徴です。
屋根に使われる材料はさまざまありますが、カラーベストは価格の安さと施工のしやすさから、一般住宅で人気の高い屋根材です。
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もともとはケイミュー株式会社の商品名でしたが、現在では「スレート屋根=カラーベスト」として広く使われるようになっており、屋根材の代表格といえる存在です。
コロニアルとの違い
「カラーベスト」と似た言葉で「コロニアル」という名称があります。コロニアルはカラーベストシリーズの中の一製品を指す言葉です。
それぞれの位置づけは以下の表の通りです。
用語 | 特徴 |
---|---|
カラーベスト | ケイミュー社の屋根材シリーズ全体 |
コロニアル | カラーベストシリーズの中の製品名(例:コロニアルグラッサなど |
つまり、「コロニアル=カラーベストの一部」であり、「カラーベスト>コロニアル」という関係になります。
ただ、実際の現場や見積書などでは、どちらもスレート屋根材の代名詞として使われているため、一般の方が厳密に区別する必要はほとんどありません。
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リフォームや点検を考える際には、どちらも「同じような屋根材」として理解しておいて問題ないでしょう。
カラーベストの主な種類と特徴
現在のカラーベストにはさまざまな製品がありますが、基本的な構造はどれも共通しており、セメントに補強繊維を加えて板状にしたものです。
カラーベストは、特徴や価格帯などによって以下の5シリーズ10種類に分かれています。
商品名 | シリーズ名 | 色 | 価格 | 耐候性 |
---|---|---|---|---|
レイシャスグラッサ | プレミアムグラッサ | 4色 | 20,020円/坪 | ☆☆☆ |
グラッサ600 | プレミアムグラッサ | 4色 | 20,460円/坪 | ☆☆☆ |
グラッサ600・シャッフル | プレミアムグラッサ | 3色 | 22,110円/坪 | ☆☆☆ |
コロニアル遮熱グラッサ | 遮熱グラッサ | 9色 | 18,480円/坪 | ☆☆☆ |
コロニアルグラッサ | グラッサ | 16色 | 17,820円/坪 | ☆☆☆ |
コロニアルグラッサ オプションカラー |
グラッサ | 7色 | 19,800円/坪 | ☆☆☆ |
コロニアルグラッサ シャッフル |
グラッサ | 4色 | 19,140円/坪 | ☆☆☆ |
コロニアルクアッド | クァッド | 12色 | 17,160円/坪 | ☆☆ |
いずれの製品も、豊富なカラーバリエーションやスタイリッシュな見た目が特徴です。
価格帯も比較的手頃で、初めて屋根リフォームを検討する方にも取り入れやすい素材になります。さらに軽量のため、住宅の耐震性が上がることも大きな特徴とされています。
アスベスト含有の年代と安全性
古いカラーベストの中には、かつてアスベスト(石綿)が含まれていた製品もあります。
アスベストは耐熱性や強度に優れていたため、建築資材として広く使われていましたが、健康被害の懸念から現在は使用が禁止されています。カラーベストにアスベストが使用されていたのは2004年(平成16年)以前までで、それ以降に製造された製品には含まれていません。
年代 | 代表的な商品 | 耐用年数 |
---|---|---|
アスベスト含有商品(~1990年代前半) | ニューコロニアル | 40年 |
アスベストを取り除いた商品(1990年代前半~2000年代半ば) | コロニアルNEO | 20年 |
アスベストを取り除き改良した商品(2000年代半ば以降) | コロニアルクァッド | 30年 |
なお、アスベストが含まれている場合でも、屋根材が破損していなければすぐに飛散する心配はほとんどありません。
ただし、屋根リフォームや撤去を行う際は、必ず専門の業者に相談するようにしましょう。
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築15年以上が経過している住宅で、「カラーベストが使われているかわからない」という場合は、まずは屋根材の種類と築年数を業者に確認してもらうことをおすすめします。
業者に依頼する場合の費用と施工プラン
カラーベストのリフォーム方法には、「塗装」「葺き替え」「カバー工法(重ね葺き)」の3つがあります。
屋根の状態や築年数、そして予算によって適した工法は異なるため、それぞれについてきちんと理解しておくことが大切です。
工法 | 工事内容 | 費用目安 | オススメの人 |
---|---|---|---|
塗装 | 既存屋根の表面を塗り直して防水性や美観を回復させる工事 | 約30〜60万円 | 築10〜20年・軽度な劣化・費用を抑えて屋根を延命したい人 |
葺き替え | 屋根材と下地をすべて交換し、新しい屋根に一新する工事 | 約80〜150万円 | 雨漏りやアスベスト対策が必要で根本から安心な屋根にしたい人 |
カバー工法 | 既存屋根の上から新しい屋根材をかぶせる工事 | 約60〜120万円 | 解体コストを抑えたい・断熱・遮音を強化したい・外観を一新したい人 |
塗装の場合
塗装は、カラーベストの表面に塗料を再施工して防水性や遮熱性などの機能を回復させる工事です。
屋根材そのものは残すため、撤去や張り替えを伴わず、最も手軽で費用を抑えやすいメンテナンス方法になります。
費用は30〜60万円が一般的となっており、屋根の大きさや塗料の種類によって変動します。
工期も3〜5日と短く、生活への影響が少ない点も魅力のひとつです。
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屋根材自体の劣化が軽微である場合にのみ有効です。ひび割れや反り返りが進んでいると、塗装しても十分な効果が得られないケースがあります。
<塗装の費用比較(30坪の住宅を想定)>
屋根材 | 塗装の可否 | 費用目安 |
---|---|---|
カラーベスト | ◎ | 約30〜60万円 |
瓦屋根 | × | – |
金属屋根 | △ | 約40〜70万円 |
葺き替えの場合
葺き替えは、現在の屋根をすべて取り外し、新しい屋根材にまるごと入れ替える工事のことです。
下地部分まで確認・補修が可能なため、屋根の不安を根本から解消できる最も安心度の高い方法になります。
費用はおおむね80〜150万円が一般的となっており、機能性の向上と長期的なメンテナンスの手間を減らせる点で、コストに見合った価値があります。
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古いカラーベストにアスベストが含まれている場合や、雨漏りの兆候がある場合にも適した工法です。
<葺き替えの費用比較(30坪の住宅を想定)>
屋根材 | 葺き替えの可否 | 費用目安 |
---|---|---|
カラーベスト | ◎ | 約80〜120万円 |
瓦屋根 | ◎ | 約120〜200万円 |
金属屋根 | ○ | 約90〜160万円 |
カバー工法の場合
カバー工法とは、今ある屋根材の上から新しい屋根材をかぶせる工法のことです。
既存屋根を撤去せずに施工するため、撤去費用を抑えられ、工期も短縮できるというのが大きな特徴です。
費用は60〜120万円前後となっており、葺き替えと比べてコストを抑えながら、屋根の性能を大きく向上させることが可能です。
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すでに屋根が激しく劣化している場合や、アスベストが含まれている場合には、施工できないことがあります。
<カバー工法の費用比較(30坪の住宅を想定)>
屋根材 | カバー工法の可否 | 費用目安 |
---|---|---|
カラーベスト | ◎ | 約60〜120万円 |
瓦屋根 | × | – |
金属屋根 | △ | 約70〜130万円 |
カラーベストのメリットとデメリット
カラーベストは、価格の手頃さや豊富なデザイン性、そして軽量性による耐震性能の高さが魅力の屋根材です。
一方で、環境によっては向かないケースもあるため、事前にメリットとデメリットの両方を把握しておくことが大切です。
カラーベストのメリット
カラーベストのメリット
- 初期コストの安さ
- カラーバリエーションやデザインが豊富
- 軽量で耐震性に強い
カラーベストの最大のメリットと言っても過言ではないのが、初期コストの安さです。
同じ面積を施工する場合、瓦屋根や金属屋根と比べて、カラーベストは材料費・施工費ともに安価で済みます。 カラーバリエーションやデザインの多さも挙げられます。落ち着いたトーンから明るめのカラーまで選択肢が豊富にあるため、外観にこだわりたい人にも人気があります。
また、カラーベストは屋根材として非常に軽いため、建物にかかる負荷を軽減し、地震時の揺れを抑える効果にもつながります。
カラーベストのデメリット
カラーベストのデメリット
- 寒冷地での使用に向いていない
- 定期的なメンテナンスが必須
カラーベストには、寒冷地での使用に向かないという弱点があります。
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気温が氷点下まで下がる地域では、雨や雪が屋根に染み込み、そのまま凍結と融解を繰り返すことで、「凍害」と呼ばれる劣化現象が発生しやすくなるためです。
とくに積雪の多い地域や寒さの厳しい地域では、カラーベスト以外の屋根材を選んだ方が適している場合も少なくありません。
さらに、表面の塗膜が劣化すれば防水性能が落ちるため、10〜15年ごとの塗装メンテナンスが必要です。
カラーベストの選び方
カラーベストにはさまざまな製品があり、選ぶ際のポイントも人によって異なります。
「できるだけ費用を抑えたい」「断熱性を高めたい」「見た目にこだわりたい」など、重視する要素によって最適な製品は変わるため、それぞれの観点から選び方のポイントを解説します。価格でカラーベストを選ぶ
価格で選ぶ際は、初期費用やランニングコストのバランスを留意しましょう。
カラーベストは、瓦やガルバリウム鋼板といった他の屋根材と比較しても、材料費・施工費ともにリーズナブルな部類で、塗装によるメンテナンスが可能な点も魅力的です。
ただし、安さだけで選ぶと、メンテナンス頻度や長期的な耐用年数とのバランスが悪くなることもあります。
端的な価格の安さで選びたい場合には、最安価の「コロニアルクァッド」がおすすめです。
コロニアルクァッドはエントリーモデルのため、カラーベストの中でも群を抜いて価格が安くなっており、価格を抑えて導入できます。
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塗装の再施工を含めたトータルコストで比較することが大切です。
機能性でカラーベストを選ぶ
機能性を重視する場合、遮熱性・耐候性・軽量性などが検討ポイントになります。
たとえばカラーベストは瓦屋根の約半分〜3分の1ほどの重さのため、耐震性に優れています。
寒冷地においては凍害への注意が必要ですが、温暖な地域であれば十分に対応可能な機能性を備えています。たとえば遮熱性として高い機能をもつのは「コロニアル遮熱グラッサ」です。
太陽光を反射させることで、室温が上昇するのを防ぐ性能があります。
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ペットや小さなお子様がいる家庭では留守時の室温をコントロールすることにもつながります。
デザイン性でカラーベストを選ぶ
カラーベストのデザインバリエーションは豊富なため、外観にこだわりたい人にとっては魅力のある商品です。
シンプルでシャープな印象を与えるデザインが多く、和風・洋風を問わずさまざまな建物にマッチします。カラーも定番のグレー・ブラックだけでなく、ブラウン系やブルー系など、個性を演出できる色味が揃っているのが特長です。
また、表面に天然石調の加工が施されたタイプなどもあり、質感の違いで選ぶことも可能です。
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デザイン性と機能性を両立させたい場合は、外観と性能のバランスを意識した製品選びがポイントになります。
よくある質問(FAQ)
カラーベストに関するよくある質問について、代表的なものを3点まとめました。
施工期間はどれくらい?
塗装に適した季節や時期はある?
カラーベストのサイズ・重さ・形状は?
一般的なカラーベストの1枚あたりのサイズは、長さ約910mm・幅約182mm・厚さ約5mmです。重さは1枚あたり約3kg前後で、30坪の屋根に使う場合は、屋根全体でおよそ150kg〜200kg程度となります。
形状は長方形でフラットなものが多く、施工性にも優れています。直線的なデザインが屋根にシャープな印象を与え、現代的な住宅にマッチしているのが特徴です。軽くて扱いやすいため、建物への負担も抑えられ、耐震性の向上にもつながります。
施工期間はどれくらい?
施工内容によって期間は異なりますが、塗装の場合はおおよそ3〜5日程度が目安です。天候が安定していれば、1週間以内に完了するケースがほとんどです。
一方、葺き替えやカバー工法などの大規模な工事では、7〜10日ほどを見込んでおくと安心です。下地の補修や資材の搬入状況によっても変動します。
また、雨や強風の日は作業が中止になるため、梅雨時期や台風シーズンは工期が延びる可能性があります。スケジュールに余裕を持って依頼するのが理想です。
塗装に適した季節や時期はある?
塗装に適しているのは、春(4〜5月)や秋(9〜11月)の穏やかな季節です。
気温が安定しており、湿度が低い時期は塗料の乾燥がスムーズに進み、品質の高い仕上がりが期待できるためです。逆に、梅雨・真夏・真冬は塗装に不向きな時期とされます。
湿度が高いと乾燥に時間がかかり、夏や冬は温度によって塗料が定着しにくくなるリスクがあるためです。
まとめ
カラーベストは、価格・デザイン・施工性のバランスが取れた、非常に扱いやすい屋根材です。
塗装やカバー工法による柔軟なメンテナンスが可能で、耐震性にも優れています。一方で、凍害に弱いなどの弱点もあるため、地域の気候やライフスタイルに合った選択が必要です。
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カラーベストを選ぶ際は、「価格」「機能性」「デザイン性」など、重視するポイントを整理し、自宅の状況に合わせた製品や施工方法を検討しましょう。